しきおりつづり

糸を組み合わせて布を作るように、文字を組み合わせて文を作る。しきおりつづり(織織綴)と申します。

歪んでいるのに成り立っている 『その桃は、桃の味しかしない』

 

 しきおりつづりの織(しき)です。

 本日は、加藤千恵さんの『その桃は、桃の味しかしない』について綴ります。

 

 ※46頁まで読んだ感想です。

 

 

 

 

 

書籍紹介

 

タイトル:その桃は、桃の味しかしない

作家名:加藤千恵

出版社:幻冬舎

出版日:2012/4/25

本の形態:単行本

ISBN-10:4344021711

ISBN-13:978-4344021716

 

 

作者について

 

 作者さんのお名前を見たことがある気がして、 織 - 読書メーター を確認したところ、『誕生日のできごと』*1を読んでいました。

 誕生日という区切りの日を基準に、その人がどう変化していくのかを見守る……という内容です。女性は特に10代と20代では大きく変わるので、それを追っていくというのはなかなか面白かったです。

 

内容について

 

 表紙の可愛さと、冒頭で主人公が読書している描写があることから、この本を読んでみようと思いました。

 

 最初は2人の女の子は姉妹なのかと思っていましたが……。

 えぐい……。こんな関係、普通なら耐えられません。

 

 読んでいるうちに、この2人なら成り立つような気がしてくるので不思議です。

 

 

 ※以下、関係性のネタバレあります。

 

 

綴り手の前提

 

 私自身は両親や世間からの影響で、いわゆる「ノーマル」の価値観に縛られています。「一人の異性を好きになる」ことが当たり前。今まで、無意識に「男性」の中から惹かれる人を探していました。

 

 そんな人間なので、自分とは違う恋愛観の方からカミングアウトしていただいたことはありません。

 それゆえ気に障るところがありましたら申し訳ないです。

 

 

綴り手の価値観による疑問

 

 疑問①

 

「種の保存」という点では、一人の男性に一人の女性という日本の仕組みはよくないのかもしれません。

 

 それでも、一途であるべきという考えに縛られている私は複雑な感情になります。

 同じ状況に置かれたら、嫉妬とストレスで体調を崩しますね。

 

 2人きりのシーンもあるのがえぐいです。「2人の空気」がびしびし伝わってくるので……。

 

 また、男性側はタイプの違う女性を同時に愛することは可能なのでしょうか。

 

 

 疑問②

 

 恋愛を抜きにしても、他人と同棲するというのはどうなのでしょう。恋人でも友人でもない相手と。

 人間の「慣れ」の力は凄いけれど、どんなことでも「日常」となるのでしょうか。

 

 書庫があって家賃がないというのは、とても魅力的な条件です。

 けれど、恋人(?)の恋人がいる、というだけで十分避ける理由になりうるのではないでしょうか。

 暮らせるのでしょうか。ついていけるのでしょうか。

 

「人間関係」というのは一番面倒な問題だと個人的には思います。逃げたい。

 

 うーん……。私には無理です。

 どんなに苦しくても離れます。その判断ができるうちに。

 

二人の女性

 

  主人公の奏絵さんよりずっと、まひるさんの方が魅力的だと思います。幼いけれど。いや、幼いからこそ。

 私はまひるさんの感覚に近い人間だと思います。

 

 まひるさんは純粋ですね。素直に平井さんのことが好き。

 だからこそ、平井さんから離れた方がいいと思ってしまいます。今までそうしてきたのだから、そうはならないのだろうな、とも思います。

 

 奏絵さんとまひるさんの2人がベッドで会話しているシーン、尊いです。

 まひるさんのお母さんの話から、死にたくなる感覚がある人なのだと知って、なんだか安心しました。まひるさんは遠い人じゃない。主人公よりよっぽど理解できる人間だと感じました。

 

 

おわりに

 

 今年の夏は花火をするだろうか、と考えながら読んでいました。

 花火を見ている時、火を見つめている時も、なんだか通常と違う時間の流れ方がしている気がするのは何故なのでしょうね。

 

 この3人がどこへ向かっていくのか、全く想像がつきません。

 こんな内容でも本を投げ出さずにいられるのは、加藤さんの文章の巧さ故です。

 

 まひるさんだけでも幸せになってほしいなぁ、と思う、まひるさん贔屓の綴り手でした。

 

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加藤千恵『その桃は、桃の味しかしない』

 

*1:

タイトル:誕生日のできごと

作家名:加藤千恵

出版社:ポプラ社

出版日:2010年9月7日

本の形態:文庫

ISBN-10:4591120619

ISBN-13:978-4591120613